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UL伊勢市に建設機械などの大型機器に対応可能なEMC試験棟を2020年7月に竣工予定

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第三者機関として国内初の建機向け電波暗室を設置

米国の第三者安全科学機関であるUL Inc.(本社:イリノイ州ノースブルック、以下UL)は、日本においてモビリティ産業の“CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)”対応を支援する安全コンプライアンス・サービス事業を強化してきた。その一環として、三重県伊勢市の伊勢本社内に、第三者機関として国内初となる、建設機械などの大型機器向け電波暗室*¹を備えたEMC試験棟を新設する。同試験棟は2020年7月に竣工予定で、同月稼働予定の電波暗室は、第三者機関が保有する電波暗室の中で、建機の利用が可能な暗室仕様を満たす国内唯一の電波暗室となる。

2015年12月 国土交通省は、「ICT の全面的な活用(ICT 土工)」等の施策を建設現場に導入することにより、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取組み 「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の導入を表明した*²。

 

安全性の向上や人手不足を補うための生産性向上だけでなく、環境への配慮も必要となり、ICTの導入や電動化が加速し自動運転の開発も進んでいる。「電動化」や「コネクテッド」が進み、多くの電子部品が搭載されるようになった建機から発せられる電磁ノイズによる電子部品同士の電磁干渉が、重大な事故につながる可能性も指摘され、この電磁ノイズや電磁干渉が原因で引き起こされる事故を防ぐために、EMC(電磁両立性)試験の重要性が高まっている。

日本建機メーカーの輸出割合は50%と高く、全世界への展開が見込まれる*³。

 

建機を欧州に市場に拡大するには、EU整合法令への適合と機械へのCEマーキングの表示が必至。現在、その要求の1つである2014/30 EU EMC指令の整合規格「EN 13309:2010」の置き換えが進められており、2021年には最新規格である「EN ISO 13766-1,2:2018」の強制化が予定されている。

 

この規格の強制化により、EMCで要求される放射イミュニティの上限周波数が拡大したため、建機本体に電波照射が求められることとなる。国内で建機が利用可能な電波暗室の確保が求められる中、ULは、技術革新や制度変革に伴い変化する法規制/規格への適合を支援するため、伊勢市に新たに建機向けの試験棟を開設することとなった。伊勢市に新設予定の電波暗室は、電波暗室内寸法が縦18.2m x横23.2m x高さ11.0m、入口寸法が幅8m x高さ8m、耐荷重100t、大型機器に対応する排気設備を備えており、第三者機関として建機の利用が可能な暗室仕様を満たす国内唯一/国内最大の特別仕様の電波暗室となる。建機に限らず本暗室の仕様範囲内であればフォークリフト、クレーン、バス、トラック、電車、大型農機、小型飛行機等のEMC試験対応が可能。

ULは、第三者機関として、国内初の建機向け電波暗室の導入を通じ、建機市場の拡大に備えるメーカー各社の試験/開発体制構築をサポートするとともに、EMC、無線、サイバー・セキュリティ、相互接続性、材料、電池など、トータル・コンプライアンス・ソリューションを提供し、日本から生まれる「モビリティ」の可能性を社会全体、そして世界に広げていきたいと考える。

 

*1 電波暗室 外部環境に存在する電波の干渉を受けないよう、また内部から発生する電波を遮断できるように建設されたシールド空間。外部の電波環境に影響を受けず、試験対象が発生するノイズ(電磁妨害波)が他の機器に影響を与える危険性があるか、あるいは一定の強さのノイズを受けた時に誤作動が起こらないかといったEMC(電磁環境両立性)を計測する試験設備。
*2 参照:「i-Construction委員会」の開催について 国土交通省、2015年12月11日 <http://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_000322.html>
*3 参照:「会社四季報 業界地図 2019年版」、2018年9月6日発行、日本建設機械工業会

 

 









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